JST未来社会創造事業 (本格研究)

人間中心の社会共創デザインを可能とするデジタル社会実験基盤技術の開発

研究代表者 貝原俊也(大阪工業大学)

JST未来社会創造事業 プロジェクト紹介


目的

本研究では、住民等のあらゆる当事者をエージェントとする実人口規模の社会モデルを用いたデジタル社会実験により、中長期的また多様な視点の社会シナリオを高解像度に可視化し、高い納得感を持つ社会政策の立案を実現します。


研究概要

これまで各自治体は、政策効果を事前評価するため、多大なコスト(大規模なものは数億円規模)をかけ社会実験を実施してきました。しかし、評価精度が低く事業投資リスクが高いことや、関係する当事者を政策立案に関与させる技術が不十分なため、納得感を得るのが困難であるという課題がありました。これは、工学的設計分野で進展するデジタルエンジニアリングが、個人情報の取扱いや意思決定モデル構築技術の難しさのため、社会デザインでは未確立であることに起因します。さらに、社会課題の解決には、当事者の参画が不可欠であり、共創デザインの視点が重要です。これらの問題意識はSociety 5.0やダボス会議の国際的目標でもある「人間中心の未来社会」の概念に通底します。

そこで本研究課題では、人間中心の社会共創デザインを確立するため、Societal Prototyping Design(SPD)基盤技術を構築します。

  • データ駆動デザイン(仮想実社会データ
    • 合成人口データ(模擬個票)を基盤とし,基本行動データも統合したデータ推定技術
  • モデル駆動デザイン(実規模社会シミュレーション)
    • 合成人口データの社会・人流構造を反映した最大1億2千万人が動く超高速なエージェントベース社会シミュレーション技術
    • 多層多目的モデル逆推定技術を用いた自律的エージェントの複雑で現実に即した行動を再現
  • コミュニケーション駆動デザイン(未来共創型アプローチ)
    • 実スケールの社会シミュレーションを介在させたコミュニケーション
    • 可視化,ゲーミングなどの技法を援用することで,状況のフェーズ全体に渡ってステークホルダ同士が関与を実感し,自分ごと・納得感を醸成させながら政策を共創

人間中心の新しい社会の実現を目指して

本研究課題では、都市政策や街づくりなどを対象とした具体的な社会課題の解決を目標とします。そして現在、全国124(2023年9月現在)の市町村の首長が参加するSmart Wellness City首長研究会(SWC:健幸都市)と連携し、いつまでも健康で幸せに暮らせる街づくり政策支援のためのSPD基盤のプロトタイプ構築に取り組んでいます。技術的には、多様なステークホルダーとの共創のプロセスを取り込んだSPD基盤技術の開発、および同基盤を用いたデジタル社会実験の有効性検証を行います。

この手法の有効性が立証されれば、自治体だけでなく産業界を含めた施策における精度や投資効率が飛躍的に向上します。また、ある自治体で成功した政策例を地理的・経済的な条件や制約の異なる他の自治体にも迅速・安価に横展開することも容易になります。その結果大きな経済効果を生み出し、人間中心の未来社会の実現に貢献することが期待されます。

リンク

JST(科学技術振興機構) 未来社会創造事業

一般社団法人 ソサエタルデザイン研究所

Smart Wellness City 首長研究会